ILO_Japan_Friends’s diary

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国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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ILO職員インタビュー第4回(2/2):三宅伸吾 労働法国際労働基準専門家

前回は、三宅さんの業務内容や、やりがいについて伺いました。記事はこちらから↓

第4回(1/2):三宅伸吾 労働法国際労働基準専門家〜業務内容ややりがい〜

今回は、キャリアパスについて聞いていきます!

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ILOで働くまで

国際公務員を目指すきっかけはどのようなものでしたか?

青臭い話ですが中学3年生の頃、友人らと将来の夢について輪になって話したことがきっかけです。私はそれまで宇宙飛行士になりたいと思っていましたが、視力や語学の条件から諦めざるをえなかったんです。なので友人と話した時は特に夢がありませんでした。そんな状態で皆それぞれ、医師や学者など、素晴らしい夢を持っていることを聞いて、じゃあ私は皆の夢を叶えてあげるような仕事をしたいと思ったんです。どうすればいいか考えて政治を思いつきました。政治で友人がしたい研究を後押しすることもできるし止めることもできるなと。そして次に中学2年生の時に留学で私のクラスに来ていたオーストリア人のことを思い出しました。私にとって中学生の時期は日本の外にも生身の人間がいるということを知識だけでなく実感として持ち始めた時でした。そこから、目の前の友人だけではなく世界中の人の夢をかなえてあげようと思い、じゃあ同じ政治でも国際政治だと。であれば、国連だろうと。単純ですよね(笑)

それだけなら、その場の思い付きだけで終わったかもしれないけれど、当時、自分にはオーディオ機器のカタログを会社に葉書で問い合わせて読むっていう暗い趣味があって(笑)お金があったら、こんな組合せのコンポを買おう、なかったらこの組合せでとか妄想するのが楽しかったんです。それと同じノリで、日本国際連合協会に「国連職員になるためにはどうしたらいいんですか?」って葉書を送ってみたんです。そしたら、ある日突然、外務省から分厚い封筒が届いたんです。その時は、「自分は何か悪いことをしたんだろうか」と焦ったんですが、中を開けてみたら、国連職員の手記や試験、機関の種類に関する大量の資料が入っていたんですよ。国連協会の方が親切に私の葉書を外務省国際機関人事センターに回してくださり、人事センターの方も中学生のリクエストにきちんと応えてくださったというわけです。これを見た時に、会話中の思い付きで国際公務員と言ったけれども、こんなにも真面目に中3のリクエストに応えてくださるということは、求められている職業なのかもしれない思い、より真剣に考えるようになりました。

それから、国連についての本を読みだしたり情報収集をしたりしていたら、アメリカに留学する機会にも恵まれ、なんとなく国連職員へと人生が転がり始めた感じがしています。

 

―中学生の頃から目指されていたのですね!一度、民間企業へ就職されていますが、その理由はなんでしょうか?

はじめは、大学院終了後にはすぐにJPOを受けて国連職員になるつもりでいました。ただ、ある国連機関でアルバイトをした際に、やはり専門の知識だけでなく、効率的に仕事を進めるスキルを身につけたり、よりいい組織になるよう提案できたりすることも大切だと感じ、一度民間で働くべきだと考えるようになりました。そこで大学院修了後は、経営コンサルティング会社に入りました。その後、3年半働きましたが、外資コンサルティングということもあり、若いうちから仕事を任され、短い期間しか勤めませんでしたが色々な経験をすることができました。在職中は主に、人事や組織関係のプロジェクトに携わっていました。

 

ILOでのキャリア

―なるほど、紆余曲折あっての国連職員なのですね。その後、どのようにILOに入られたのでしょうか?

3年半働いて、「もうそろそろいいかな」と思ったこともあり、JPO試験を受けました。現在とは違って、当時はJPOプログラムでの採用が決まってから、勤務希望の機関を提出し、ポストを探していただくという流れになっていました。この時初めてILOを勤務先の選択肢として真剣に考え、国際法を扱う部署が大きいところということで第一希望にしました。その後JPO派遣準備を進めていたのですが、ILOのYoung Professional Career Entrance Programmeという国連のYPPのようなプログラムをJPOよりもILOに残りやすいですよということでを外務省の方から薦めていただき、この試験を受けてILOに勤めることになりました。

プログラムで入ったため、最初の1年間をジュネーブ本部、2~4年目はマニラとインドネシアで働き、その後ジュネーブ本部に戻りました。本部では主に加盟国のILO条約実施状況を監視する仕事をやっていました。ILO条約はいろいろな労働問題を扱っていますが、主に賃金・労働時間・船員など特定の労働者に関する条約を担当していました。2015年からはトリニダード・トバゴILO事務所で働いています。そこでの仕事は、ILO条約をより効果的に実施できるよう加盟国を支援することです。例えば労働法改正のサポート、ILO条約のプロモーションですね。

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2006年の海事労働条約により設立された特別三者委員会の2014年の会議にて、条約の修正案が可決されたときに議場内で流されたスライド。莫大な準備とハプニングの中、三宅さんが作成された思い出深い一枚。

ILOで長年キャリアを積まれていますが、働く場所としてILOは他の国際機関とどう違いますか?

ILOでは長く働く人が多いですね。労働問題を中心に扱っている機関が他にあまりないというのも理由の一つであると思います。また、もう一つの特色として、ILO英語以外の言語の存在感が強いと感じています。職員には英語以外の言語もシビアに求められることもあります。本部でのミーティングは英語で進められていたのが突然フランス語に切り替わったりすることもあります。多くの日本人にとっては大変ですが、面白い環境でもありますよね。こういうところに入ってしまったのでがんばるしかありません。

 

ILO各地域事務所の特徴は、その事務所がカバーしている国の特色で決まります。私が働いているカリブ海地域では、政権や大臣、官僚が変わると、政策がこれまでの経過にかかわらず変わることがあるので今までやってきたことがすべて白紙に戻ることもあります。そんなこともあり仕事が進みにくいです。それに比べると、アジアは仕事の進みが早い印象はあります。しかしその分、ILOに対してもスピーディに結果を出すことが求められたりしますよね。

 

―今後のキャリアの展望を教えてください。

今はILO条約の扱っているテーマであればすべて担当します。広く浅くの仕事ぶりですね。今後は特定のテーマや国に絞って、狭く深く仕事をするチャンスがあったらいいかなと思っています。例えばILOのプロジェクトにもっと携わっていきたいです。

 

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読者に向けたアドバイス

国際公務員を目指す若者へのメッセージをお願いします。

皆さんには、好きなことや興味のあることを追い求めてほしいです。国連で働くこと自体を目指すというよりも、自分の好きな分野で仕事をする上で国連が良いと思うのであれば国連で働くというように考えるといいと思います。「国際機関で働くにはどうしたらよいですか?」ではなく、「これまで学んできた内容や知識を、国際機関で活かせるチャンスはありますか?」という風に考えるということです。

国際機関では一般に専門家を求めるため、興味がないのに国連に入りやすいからと自分が必ずしも興味のない分野の勉強をしても、最終的にはあまり意味がないと思います。後も辛いですし。むしろ、好きなことを求め続けて、その延長線上にたまたま国連があることが理想的なのではないかと思います。

また、国際機関に入りたいのであれば、語学を追い求めてほしいです。もしかしたら、言語を勉強するうちに自分の興味のある国・地域や問題が見つかるかもしれませんし。ある言語ができるからというので仕事が回ってきたりすることもあります。国際機関に入らなくても観光で使える。なので語学は間違いない投資と言えると思います。

 

―お忙しい中、ありがとうございました!

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次回はILOアジア太平洋地域局の技能・就業能力専門家である坂本明子さんにお話を伺います。お楽しみに!

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