ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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コロナ禍に聞く若者の働き方ー世界の労働問題を扱うILOインターン経験者の視点ーVol. 3

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新型コロナウイルスの影響が及ぶ社会の中で、実際の若者はキャリアについて何を思い、何を感じているのか?

本企画では、この問いを中心に、ILOに関わる若者の中で、それぞれのキャリアの歩み、今後のキャリアの目標、そしてコロナの感染拡大が続いている今の状況について話しました。

Vol.1はこちらから

Vol.2はこちらから

vol.3では、昨年ILOインターンをした卒業生2名を招き、そこで集めたリアルな声の一部をご紹介します。

 

<聞き手>

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainf:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain現役インターン

<話し手>

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain金融機関勤務、新卒1年目。法学部を卒業後、労働政策、労働法、政策の定量分析を勉強したいと考え、公共政策大学院に進学。現在は金融機関に勤務し、幅広い視野を持って金融関連の業務ができることに魅力を感じている。オンラインでの新人研修真っ最中。

 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain弁護士。労働法が好きで、大学院で団体交渉義務違反を研究しながら、所属する弁護士事務所では弁護士として使用者側から新型コロナウイルス関連の相談やその他株式やM&Aなど金融関連の業務も担当。自らを発信していくことの大切さを感じ、最近ではSNSを通して積極的に発信中。

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座談会の様子

 

 
今のキャリアに至るまで

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今のキャリアに至るまで、どのような歩みがありましたか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain大学卒業後は、公共政策大学院に進学し、今は金融機関に勤務しています。学部時代は関西におり、法学部に在籍していました。学部当時から、法律が社会に与える影響を捉えるためには、経済的・計量的な分析ができる必要があると考えていました。当時は国際公務員に憧れを持っており、そのためには国際性と学位が必要であるということも知りました。そのため、キャリアの裾野を広げ、明確にするため、また、実務に役立つスキル(分析)を身につけるためにも、東京にある公共政策大学院に進学しました。東京ではやりたかったインターンにも応募でき、色々な機会を得ることができたと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain現在は、弁護士として働きながら、大学院にも在籍しています。私は、今まで感覚的にやりたいことを選んで突き進んできました。法律の勉強をし始めた一番最初のきっかけも、弁護士を準備している兄に負けたくないという競争心からです(笑)競争心と興味で入学した法学部ではあったものの、実際に授業で弁護士の先生方の話を聞いて、一緒に社会を変えていく、人を動かしていく力を魅力的に感じ、そこから弁護士をより一層目指すようになりました。学問的なところは職についた後から、仕事で感じた面白みを学術的な部分につなげました。

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今の仕事を選択した動機はどのようなものでしたか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain金融業界に進んだ理由としては、学問の動機の延長線上で、社会に与える影響を数字で読めるようになれると良いなと思いました。コンサルタントも候補にありましたが、長期的なキャリアが自分では思い描けませんでした。また、今の会社は自分の担当を持って主体性を発揮できるという点に魅力を感じました。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain今の事務所を選んだきっかけは何よりも人の繋がりです。それは会社に知人がいるという意味での繋がりではなく、事務所の先生方と会話を交わした時に感じた繋がりです。この感覚を大事にし、その中で一番自分を大切にしてくれそうなところを選びました。特に、今の事務所は、私が司法試験や予備試験に合格する前、自分を証明できるものがない時にでも、一人の人として自分の魅力を感じてもらい、パーソナリティを大切にしてくださったと感じました。今も会社ではすごくのびのびとさせてもらっています。

現在、コロナ禍の働き方は?

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainコロナ禍、今はどのような働き方でお仕事をされているのでしょうか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain現在は会社の寮で過ごしながらオンラインでの新人研修中です。まだ出社したことがないので、これから出社となった時に少し心配ですね。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain私の会社は2月からリモートで、緊急事態宣言解除後は週2程度でオフィスに行っています。基本的にはラッシュの時間を避けて出勤をしており、10時に行って16-17時前には帰宅し、それ以外は自宅で仕事をしていますね。今回、仕事は家でもできるという気づきが大きかったです。家族と過ごす時間、趣味などを犠牲にしてまで職場で働くことに固執する必要はないかと。コロナ禍での働き方のメリット・デメリットを整理して今後はメリットを残していく働き方改革を行っていけば良いと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plainオンラインでの業務方法はとても気になる点ですよね。研修期間中など、ある程度形が決まっているものであれば構わないのですが、企業によっては機密事項がたくさんあり在宅できない環境にいる会社も多くあると思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainそうですね。今のアルバイト先でも資料持ち出し禁止事項があり、在宅に切り替わった当初は大変でした。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plainうすると、上の人は在宅で仕事ができ、下の人は出勤をせざるを得ない状況になってしまったり、ある意味不公平な状況が生じかねないですね。機密情報関連であれば、データ化してセキュリティを強化するなどの対策が取れるかもしれません。私も、紙媒体だと危ないので、モニターを二台買うなどして対処しました。会社から購入費用を支援してもらい環境を整えることができ、とてもありがたいと思っています。

 

これからのキャリアにおける障壁

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今後のキャリアで思い描いていることはありますか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain現在のキャリアの目標としては、今の会社で自分のできることをやりたいと思っています。国際公務員のキャリアにも興味があるのですが、日本にも社会から取り残されている人々がたくさんいるということ、まだまだ課題があり、これらの解決のために今のポジションでどう活動していけば良いのかを考えると、今すぐ国際機関のキャリアに挑戦することは考えていないです。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain本社がアメリカということもあり、日本について説明する時に、アメリカと比較しながら説明できるようになりたいと思っています。そのため、アメリカ留学をしたいのですが、新型コロナウイルスで留学が容易にできない現状に対して、少し心配な面はあります。でも留学もキャリアにおける一手段に過ぎないので、留学以外の方法も模索しながら自分を発信できる方法を試して、自分に相談すれば何とかなる、「頼ってもらえる存在」になれれば良いなと思っています。

 

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plainこれからキャリアを深めていく上で障壁になると思われるものはありますか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain個人的な能力と経済的な面が問題になってくると考えています。金融機関に入るまで勉強したことのない分野があり、身につけることがたくさんあります。また、能力を伸ばそうとして教育を受けようと思った時に、経済的な障壁は必ずあると思っています。会社の留学補助制度は競争率も高く、業務に直接関係しない分野で学びたいことがあれば補助の対象外でしょうし、自費で行くしかないと思います。副業も、申請をして異議がなければ認められますが、大々的には行えないかなと思います。また本業が忙しく、やれる環境にあるかも定かではないです。 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plainキャリアの積み始めの段階では、キャリアの先を行く方々の知識量、経験値と比べるとどうしてもギャップがあり、悩むポイントだと思います。コミュニケーションスキルや学術的な面も案件に触れれば触れるほど伸びていく面があるので、ギャップがあることは自覚して、上から学べるものは学び、身につけられるように試行錯誤していくことが大切と思います。あと時間が足りないって言う悩みはありますね、気がついたら夜になっていることが(笑)

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今までのお二人のお話で共通するポイントは、能力やスキルアップといった「学び」が必要である点、また、どれほどその「学び」を主体性を持って積み重ねられるのかという点かと思います。ILOでは時間主権を持つと言う概念がありますが、そのような意味で自分の時間を自分が計画して使えるか否かも重要な点かと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain主体性という点では、自分から提案できるかどうかはかなり大きな問題だと思います。新卒3年目までを念頭におくと、与えられた一部の仕事をこなしてフィードバックをもらうという繰り返しでも成長はできると思いますが、自分で何かを成し遂げたとは言いづらいですね。「このような点が問題で、このような部分が必要だから提案をしました」と自らを発信できることは自分の主体性を維持できるので、大切だと思います。

 

日本の「仕事の世界」の見え方

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain個人的な悩みや障壁だけでなく、日本の制度的な面で障壁と考えている点はありますか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain日本の長時間労働はやはり課題だと感じています。仕事に労働者が拘束されすぎており、労働者のキャリアチェンジや学ぶ機会を得にくいという点は、労働者個人からしても社会全体にしてもマイナスと感じています。もちろんその中でもエネルギッシュに自己研鑽をし、キャリアチェンジを図る方々もおられますが、皆がみんなそのような力を持っていたり、そのような環境にあるわけではありません。

 もう一つはファーストキャリアの縛りの問題です。新卒カードを切ってしまった後はファーストキャリアの影響がとても大きいと思います。非正規でスタートしたらなかなか正規に変わることも難しく、業種を超えることもなかなか難しいです。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plainその通りだと思います。最近ではまだ緩やかになっているとは思いますが、最初選んだキャリアが縛りとなってその後のキャリアに影響してくるということは、未だに多くあるように思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain友人らがよく転職したいと言っていますが、まだできていない方が多いです。長時間業務、忙しさ、ファーストキャリアの影響が大きいのではないかと考えますね。

 f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain転職がベストというわけではないですが、その選択肢が気軽に選べないというのは課題かもしれないですね。いわゆる文系の就職だと学部卒ではやりたいことが見つからず、総合職で一般企業に入り、その後配属で自分の軸を得ていくことが多くあるかと思います。弁護士業界ではどうでしょうか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain日本の弁護士業界でも、縛りとまではいかなくても、やはり最初のキャリアに重きを置く傾向は強いと思います。それと比べて、アメリカの弁護士のキャリアを聞くと、転職を重ねて、学べることは学んだから次のところへ移っていくようなスタンスを持っている人は多いです。最初のスタートがゴールかのようにしがみついたり、潰しが効くからここと安易に決めてしまったりするのは、勿体無いかなと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainまた、職探しという点で都市と地域の情報格差は、障壁になりうるかと思いますが、どう思われますか? 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain私は、大学院進学の際に東京にきましたが、東京以外では現場にアクセスするための労力のギャップが大きくあると思います。東京では少しの労力で会える人々やインターンなども、関西にいた大学生時代は、そこへたどり着くまでかなりの労力が必要でした。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain確かに次のキャリアへの準備のために東京へ来られる方々が多くいますが、移動費や滞在費がすごく負担になりますよね。経済的余裕がないとできない部分が多いと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain興味があるセミナーに参加したいとなっても、東京にいる人は授業の間に行けたりするのですが、地方にいる人は新幹線に乗って移動しなければならないですね。その点、最近ではズームという方法が活用され始め、そういう意味ではアクセスの格差が少しは無くなったのではと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain採用されようとしてる側だけではなくて、採用しようとしている側も対策を講じて手を伸ばさなければならないですよね。

 

ILO施策へ一言

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain最後にILOのユース施策についての意見をお伺いしたいです。ILOのユース施策は途上国向けの施策が多いのではというイメージがありますが、その点も含めぜひ日本の若者からILOユース施策に対する意見をお聞きしたいです。 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plainILOが出している新型コロナのユース施策の提言を見ると、途上国、先進国関係なく当てはまるのかなと思います。特に、事業者の支援の内訳に職業訓練の支援とかシステムを補助するという点がありましたが、国が直接的な支援より、事業者と通してやるというのは大事かなと思いました。やはり必要な訓練をよりよく知っているのは企業なので、そのコストの一部を国が肩代わりするというのは大事だと思っています。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plainILOの提言は抽象度が高い方なので、行動に落とし込むにはどうしたら良いのかを掴みづらい点があるのではと思っています。ベストプラクティスなど、より具体例を添えて発信できれば、よりわかりやすく、行動にも移しやすいのではと考えますね。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plainILOサプライチェーンにおける企業の取り組み事例などはとてもわかりやすいです。抽象的な議論より、こんなことをやっているという具体例をまとめてくれると理解度が上がると思います。

 

仕事の意味と仕事における理想の状態 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain色々お話いただき、ありがとうございます。最後に、座談会の締め括りとして、皆さまにとって仕事とはどういうものか、今後キャリアを積んでいく中で仕事における理想的な状態とはどういうものか、ぜひお聞かせください。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain仕事は、自身と社会をつなぐものと考えています。仕事をすることで、社会を捉えるための新たな視点を得ることができますし、仕事を通じてこれまで出会ったことのないような人に会うことができます。仕事を通じて自分の意見や行動が認められるということも、社会とつながりを持つ上で重要だと感じます。また、仕事における理想的な状態は、円滑なコミュニケーションと向上心のある職場、でしょうか。受動的なキャリアではなく主体的なキャリアを描いていくためには、自分のやりたいことをフランクに内外に発信できるような環境が必要ですし、そうした主体的なキャリアを描く上で良い影響を与えてくれる同僚の存在も重要だと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain私にとって仕事とは、自分をレベルアップさせてくれるもの。誰でもできる仕事を毎日こなすのではなく、自分にしかできない仕事に日々没頭する状態が、理想な状態です!

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainf:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plainありがとうございました!