ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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ILO COOP 100 インタビュー企画「耕す、コープを。」:第1回 (株)地球クラブ 厚東清子さん(2/2)

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前回は、厚東さんの現在のお仕事内容や生協で働くきっかけなどを伺いました。今回は、震災時の連携や、生協間の横のつながり、2030年のビジョンについて迫ります!

 

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震災への”生協流”向き合い方

阪神淡路大震災の時は学生でしたが、当時の様子を職場の先輩からいろいろ聞きました。コープこうべは神戸市と「緊急時における生活物資確保に関する協定」[1]を結んでいたので、コープの本部は倒壊していたのにもかかわらず、物流センターや取引先と連携し、救援物資をすぐ出せたそうです。協定では、オイルショックの時に買い占めが起きた教訓から、災害時に物資の奪い合いが起きないように、コープこうべが物資を正規価格で販売することが決められていました。この協定があったからこそ、当時、便乗値上げが起こらなかったと聞いています。阪神淡路大震災の時は、職員も、自分の家が壊れているのにもかかわらず、駆けつけ、店舗にあるものを外で販売したりとすぐ動いていました。この話を資料で読んだとき、生協職員の根っこには「自分も大変なときでも、すぐ誰かのために動く」という姿勢があるんだなと思いました。

東日本大震災の時も、発生の翌日にはコープこうべの人間はトラックを出して、東日本の現場に向かいました。道路が寸断されていたりしていましたが、「まず、行こう」と。更に、その後の熊本地震等の災害時の経験も積んだことから、各生協との横のつながりができているので、緊急時に向かうべき場所の割り振りもすぐにできるような体制になってきています。

熊本地震の時も、現場にはいろいろな生協の制服をきている人たちがいて、非常に統率の取れた行動が取られていました。阪神淡路大震災の経験が活かされていると思います。

今回の新型コロナウイルスでも、各生協も大変なので、今は日本生協連が事業連合会として各生協の状況を把握して、働く人をまず守るということに取り組んでいます。緊急用に備蓄してあったマスクを医療生協や介護の現場の職員さん向けに送ったりしています。何かあった時に、すぐに行動できる体制はずっと出来ているのかなと。

 

  • 過去の経験が生かされて、その都度の災害対応につながっているというのは、一つの会社がこのようなことをやろうとすると、なかなか難しいような気もします。経験を引き継ぐために、何か取り組みは行われていますか?

各生協に、過去の経験をまとめる部署があります。まとめられた資料も、職員が見たい時にいつでもアクセスできるようになっています。あとは、先輩方の話を聞いたというのも大きかったと思います。私は先輩たちとよく飲みにいくので、飲みの席でよく話を聞いてました(笑)。

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未来の子どもたちのためにエネルギー問題に取り組む

  • 今は環境問題にフォーカスした仕事をされていますが、SDGsなどの社会課題とされている事柄の中でも、最も気になっている/働きかけていきたい分野はありますか?

今、エネルギー関係の仕事をしているので、やはり、ゴール13の「気候変動に具体的な対策を」に一番関心があります。日本生協連としても「地球温暖化対策を推進し、再生可能エネルギーを利用し普及しましょう」と言っているので、まさに、それを具体的に進める部署だと思っています。

また、ゴール7の「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」の具体的な実践として、再生可能エネルギーにこだわって調達をして広げていきたいと考えています。

 

  • 地球クラブという組織から環境問題に取り組む意義は何でしょうか?

未来のことを考える組織だからこそ、再生可能エネルギーに取り組む意義があると思います。未来の日本を担う子どもたちに負の遺産を残してはいけないですし、今起きている災害の原因と言われている地球温暖化を少しでも止めなければいけない、と考えている組織だからこそ、再生可能エネルギーに取り組む必要があるのだと思います。

各生協が実施している組合員学習会などで、エネルギーについて組合員さんと一緒に考えるという機会も多くあるのですが、その際も、今の自分たちのためというより、未来の子どもたちのためにという意識で行っていることが多いですね。

 

  • 生協というもともとのネットワークを活用して、再生可能エネルギーについての学習の機会を設けることもできるのですね。再生可能エネルギーを使おうと人が思えるようになるためには、「知る」ことは大切ですよね。

そうですね、組合員は意識が高い方が多く、配達担当者が(エネルギーの)話をすると、聞いてもらえることも多いようです。なので、職員のレベルアップにも取り組んでいて、宅配センターで配達担当者をはじめとする職員向けに学習会を開催することもあります。これも、再エネの取り組みの一つなんです。今後、配達担当者、生協職員全員に再生可能エネルギーについて知ってもらうことは、私の夢の一つでもあります。 

組織を超えた”当たり前な”協力体制

  • 今までのお話で、生協について語る際、「横のつながり」はキーワードのような気がしています。

実は、近隣の生協間ではお互いを良い意味でライバル視することもあるのですが、新型コロナのような緊急事態になると、横のつながりって強くって助け合うところが出てくるので、不思議だなと思っています(笑)緊急事態でなくても、例えばそれぞれの生協が独自の電気メニューを作って取り組んでいたりするのですが、電気に関する学習会とかを開催すると、相手のいいところを積極的に吸収しようとしたり、意見交換を活発に行ったりしています。ライバルでもあるけれど、仲が良いというところは、好きですね。

 

  • なぜ、そのような関係性が出来ているのですか?

なんか、もう当たり前になっていますね。困っている人がいたら、そこに助けにいく、というのを疑問を持たずに行動をすることが生協の職員は多いかもしれません。でも、それが普通なので「なんで?」と聞かれると困りますね(笑)

つい最近の北海道地震の際も、コープさっぽろの職員は被災した方も全員出勤したと聞いています。パートの方であっても、困っている人がいたら自らを顧みずすぐに駆けつける、という意識の方が多いなと思います。

今も、本来は4月が異動のタイミングだったのですが、日本生協連ではコロナウイルスが発生したことを踏まえて、異動を一旦止めて、元の職場に応援のために駆けつけたりしています。このように、たとえ明日からすぐに元の職場に戻って手伝ってと言われても、誰も文句も言わずにその判断を受け入れていると思います。

助け合いが当たり前、という考えは、やはり過去に助けられたと言う経験が原動力になっていますね。阪神淡路大震災の時に助けてもらったから、東日本大震災の時は助けにいく、こういった経験が共有されて、助け合いの精神が根付いているのだと思います。

 

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 再生可能エネルギーは、元々地域によってポテンシャルが違います。例えば、東北は風力が、九州は地熱が得意であったり。なので、各生協から「新しい再エネを調達したいんだけれど、どういうところにアプローチしたらいいのか?」と聞かれた際には、別の生協に連絡をとって色々教えてもらったり、どこにアクセスすればいいのか等の情報交換をすることもできています。地球クラブにも、各生協から「この(エネルギー関連)商品を紹介してほしい」などと営業が来る時もあり、他の生協につなげたりする時もあります。また、地球クラブが調達した電気を、他の独自に再エネに取り組んでいる生協に販売したりとかもしています。

生協全体で、「原発に頼らないエネルギーを皆でつくって使っていきましょう」という方針が出来たこともあり、再エネで生協同士をつなぐ際も、将来の地球温暖化対策の一つとして再エネに取り組むということがまず最初に共有されています。もちろん数字や利益も見ますが、そのような方針があるということは大きいと思います。

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2030年…「当たり前」の中に生協があって欲しい

  • 10年後、2030年までのビジョンはありますか?あれば、どのようなものか教えてください。

地球クラブとしては、日本全体の電気を100%再生可能エネルギーにするというのが目標です。そのために、まずは地球クラブの事業を日本生協連の主力事業にしていきたいです。日本生協連ウェブサイトには、主力事業が「サービスと取り組み」で紹介されるのですが、電気供給・調達事業はまだメインで表示されていません。電気は、年齢性別関係なく使うもの、つまり、食事と同じで、生まれてから死ぬまで使うものです。事業としてもっと大きくなって、日本全体の再生可能エネルギーの調達と普及に関わりたいと考えています。そのために、まずは自分たちが「再エネ電源・電力のプロフェッショナル集団になろう」といっています。

 

  • 再エネ100%になった社会とは、どんなものだと思いますか?

100%再生可能エネルギーにすると、温暖化を少しでも減退させることができますし、原発事故の問題を抱えなくてよくなります。また、再エネ普及に伴う雇用も生まれると思います。雇用が創出されると、お金の回り方が代わるので、発電所がある地域の活性化にもつながっていきます。 

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  • 厚東さんご自身のビジョンはありますか?

個人としては、当たり前の中に生協があって欲しいと思います。日本生協連の中でも、電気の契約をしている人はまだ少ないです。電気といえば地球クラブ!となるようになって欲しいです。生協に関しても、知ってはいるけど、関わっていないという人が多いと思うので、特別ではなくて、普段の生活の中に入っていけたらいいなと思っています。今関わっている電気という分野で、私は当たり前になりたいです。

 

  • 若者世代に協同組合を広げるために、今の協同組合はどのように発展していけばいいと思われますか?

これは、ずっと課題だと思っていることですね。私は、発展よりも発信が大事だと思っています。協同組合と言うと、どうしても堅い、古いというイメージがあるので、実は身近にあるということを感じて欲しいです。例えば、SDGsの「つくる責任、つかう責任」にもあるように、材料などにこだわったコープ商品を選んでもらうだけでも、協同組合に関わってもらっていることを分かってもらえればいいのかなと。協同組合自体が「どう変わるか」ではなく、今の協同組合をしっかり「どう発信をしていくか」が大事だと思います。

最近になって、ようやくCMもやり始めて、すこし柔らかいイメージになってきたかなとは思っています。こういう新しい取り組みは、続けていった方がいいと思います。SNSもやっているようです。多くの人の目につくところにやわらかく入っていけるものを、如何に継続的に発信できるかが課題だと感じています。

 

  • 協同組合が掲げているビジョンや理念は、まさに今の若い世代が共感できる考え方や取り組みを持っていますので、普遍的な価値を持った組織としてどんどん認知されていったらいいですね。

 歴史がある古い組織ではあるのですが、そういう風にいっていただけると嬉しいですね。

私が生協という組織で長年働いてきた中で「やっぱりこの組織が好きだな」と思う部分は、第一に相手の立場に立って考え、それをすぐ行動に移す風土であることです。

災害が発生した際、多くの生協が真っ先に現地に向かうのはその表れだと思います。また東日本大震災が発生したとき、私はコープこうべ労働組合の専従でした。春闘真っ最中で、生協側の回答を呑めず戦い続ける姿勢の中、遠くの地域で大震災が起こり、瞬時に今何をやるべきなのか方向転換したのを覚えています。同じ生協で働くなかまが被災している中、自分たちの労働状況改善を求めている場合ではない、と。このような組織が継続、発展するためには、宅配・店舗事業で利益を出さなければなりません。ですので、一人でも多くの方(組合員さん)にコープ商品をご利用いただきたいですね。

 

  • 協同組合を一言で表すとしたら、何でしょうか。

 「つながり」
上下はあまりないのですが、横のつながりがあるから、これまで震災でも対応ができてきているのだと思います。

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  • お忙しい中、ありがとうございました!

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こちらのインタビュー(短縮版)はILO駐日事務所のウェブページにも掲載されています。

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[1] 神戸市とコープこうべは、阪神淡路大震災の15年前の1980年に「緊急時における生活物資確保に関する協定」を締結。オイルショックの時に起こった物不足、パニック、物価狂乱に対する反省から、神戸市とコープこうべの間で物価問題研究会を設置。緊急時対応策として1つ目は、店舗に品切れを起こさないために緊急時における商品手配システムをつくること、2つ目に公正適正価格を維持するための物価監視機能を強めること、3つ目に公正な分配をすること。パニックが起こるとまず困るのは、特に高齢者や体の不自由な方々であるということを踏まえ、具体的なシステムを準備するための討議が行われた結果、「緊急時における生活物資確保に関する協定」が結ばれた。