ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

MENU

【まとめシリーズ vol.2】コロナ禍に聞く若者の働き方 :ILOインターン経験者が直面しているコロナの影響の「見える化」

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828120432p:plain

これまでのまとめシリーズはこちら↓

【まとめシリーズ vol.1】コロナ禍に聞く若者の働き方:はじめに&ILO調査から見る、新型コロナウイルスが若者に与えた影響

 

第3章 ILOインターン経験者が直面しているコロナの影響の「見える化

ここまで、ILO報告書に示されている新型コロナウイルスによる若者への影響を概観しました。

ILOの調査は世界中の若者が抱える課題の全貌を明らかにしましたが、私たちはさらに「若者」を細分化し、調査対象となっている若者一人一人が、キャリアを構築する上でどんな状況にあり、どのようなことを感じているのかを詳細に知り、その声を届けたいと思いました。そのため、ILO現役インターン及び経験者の8名と計3回の座談会を開催し、コロナ危機の中で各個人が直面している状況を共有、キャリアに関する意見を交換する時間を持ちました。

ここからは、ILO報告書で明らかになったことを踏まえ、若者一人一人がどのような状況に面しているか、座談会で共有されたそのリアルな状況を紹介していきます。

座談会参加者紹介

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain
大学院在学中、専門は国際人権法。大学卒業後から、研究者を目指すために大学院にて研究を継続。日本生まれ・日本育ちの外国籍であることから、日本の外国人問題にも関心を寄せる。今年から留学予定。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain

大学院在学中、専門は人間の安全保障。韓国生まれだが、幼少期から日本で過ごす。宣教師である父の影響を受け、幼い頃から国際協力に関心を寄せる。来年からコンサルティング会社で就職予定。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122654p:plain

大学卒業後、イギリスの大学院にて開発教育・グローバル学習の修士号を取得。その後、人材育成/エグゼクティブコーチングを扱う企業を経て、現在、ILOインターンとして労働問題を勉強中。今年からパートナーの駐在先である南米に合流予定。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain

国際協力実務家。大学卒業後、民間会社で勤務。その後、協力隊員としてマダガスカルで2年過ごし、イギリスの大学院にて国際開発学の修士号を取得。帰国後、ILOインターンを経て、現在は有期雇用職員としてコートジボワールで勤務。第1次産業と民間企業の連携に関するプロジェクトを担当し、プロジェクトの軌道修正やモニタリングなどに従事。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain

大学を卒業後、一旦就職し、その後イギリスの大学院にて修士号を取得。帰国後は、自分の専門分野である移民労働者支援などの事業を行っている会社や団体をメインに求職活動中。その傍ら、国際開発業務関連のアルバイトにも従事。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain

大学院在学中。モロッコをフィールドに、格差、貧困、不平等、それらの再生産について、特に教育の場に重心を置きながら研究。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184624p:plain

金融機関勤務、新卒1年目。法学部を卒業後、労働政策、労働法、政策の定量分析を勉強したいと考え、公共政策大学院に進学。現在は金融機関に勤務し、幅広い視野を持って金融関連の業務ができることに魅力を感じている。オンラインでの新人研修真っ最中。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901184634p:plain

弁護士。労働法が好きで、大学院で団体交渉義務違反を研究しながら、所属する弁護士事務所では弁護士として使用者側から新型コロナウイルス関連の相談やその他株式やM&Aなど金融関連の業務も担当。自らを発信していくことの大切さを感じ、最近ではSNSを通して積極的に発信中。

雇用

ILOの8月の報告書は、コロナ危機が世界中の若者の労働市場に劇的な影響を与え、雇用問題がかつてない深刻な状況にあることを明確に示しました。18-29歳の若者の6.9%はすでに職を失い、10.5%は雇用されていても実質の労働時間がゼロになったと報告、合計17.4%が仕事をなくしている状態にあり、これは6人に1人が働くことができていないことを示しています*1若者の失業のほとんどは、企業の廃業や解雇によるものであり、パンデミック発生後に失職した若者の約半分(54.0%)が、その理由として、勤めていた企業が閉鎖されたか、解雇されたかのいずれかを挙げています*2

座談会の参加者にも、このような問題を抱えている若者がいました。CさんはILOインターン修了後に、すぐに2ヶ月間の業務委託勤務を予定していましたが、コロナの影響により1ヶ月間の勤務に変更されてしまいました。また、転職活動中にコロナ危機に突入したため、活動に大きく支障が出ているということです。

Tさんも、同様の問題に直面しています。Tさんは、国際協力実務家として第1次産業と民間企業の連携に関するプロジェクトを担当し、有期雇用職員としてコートジボワールで勤務しています。契約上では、2021年12月まで駐在の予定だったのですが、コロナの影響で日本に一時帰国せざるを得ませんでした。プロジェクトの現場に行けず、いつ戻れるかも定かでない中、今後の計画や給与に大きく影響が出ています。 

大学院生のKさんは、夏に予定していた研究のための現地調査が中止になってしまいました。研究上では現地調査が重要な位置を占めているため、現地に行けないとなると、向こう数年間の計画を大きく変更しなければいけないとのことです。

コロナによる影響は、すぐに就職や雇用に関連する問題として現れてはいませんが、今後の雇用に影響を及ぼしうる状況を生み出しています。ILO報告書は多くの若者、特に学びの場から職場への移行期にある若者が、前例のない規模の労働市場リスクに晒されていると警鐘をならしていますが、その背景には若者のこのような状況があるのではないでしょうか。 

労働時間の減少と収入 

雇用の問題とともに特に顕著に見られる課題は、労働時間の減少とそれに伴う収入の減少です。報告書によれば、仕事をしている若者のうち約37%の回答者に労働時間の減少が見られ、労働時間の減少があった若者のうちの約78%には、約42%の賃金減少が見られています*3

座談会では、勤務期間が短縮してしまったCさんはもちろん、一時帰国を強いられたTさんもまた、給与に影響が出ていることを話されました。コートジボワール駐在中は現地手当が支払われますが、日本にいる間は手当を受けることができません。そのため、給料がコロナ前の約3分の1になってしまいました。特にTさんは在学中、学費を返済型奨学金で賄っており、卒業後奨学金返済の義務を抱えている身として、余波を大きく受けているといいます。

収入減少による生活への影響は、Jさんにも現れていました。Jさんは研究の傍、生活費、特に毎月の家賃の支払いのためにアルバイトをしてきましたが、勤務先が一時閉鎖し、数ヶ月間アルバイト分の収入がなくなってしまいました。それでも家賃は支払い続ければならないので、それまでの貯金を切り崩してなんとか生活してきましたが、もし貯金がなくなってしまったらどうすれば良いか、勤務先に感染者が出るなどして再度閉鎖になってしまったらどうしたら良いか不安が残るといいます。

報告書による、教育を受けている若年労働者のうち、収入が少ない人は学業を終えることができないかもしれないし、また、失ってしまった仕事の経験や収入は補うのが難しいかもしれない、という危惧は、まさにこのように一人一人が瀕している状況に現れています。

労働時間の増加

労働時間に関連する負の影響は、労働時間の減少だけでなく、増加という逆の方向にも現れています。調査対象の若年労働者の17%が、1日の労働時間が7.3時間から10.3時間に増加したと報告しているためです。このグループのうち、3 分の 2(67%)が 1 日 10 時間以上働いていると報告しています。報告書は、若年労働者の30%がパンデミック発症後に収入が減少したと回答していることから、収入の減少を補うために長時間労働をしている可能性があると指摘しています。

一方では、在宅勤務、テレワークなどに切り替わったことによって長時間労働になりがちという声もあります。Fさんはインターンスタート後にテレワークへ切り替えましたが、テレワークではプライベート時間との切り分けが難しく、働きすぎてしまうことがあると語りました。若年労働者だけでなく、テレワークのデメリットの1つとして長時間労働になりやすいことを指摘している人が多くいることから*4、労働時間の増加の原因としてテレワークがあることは否定できません。調査では在宅勤務とデジタルプラットフォーム、または他の形態での勤務を区別していませんが、労働時間が増加しているという若年労働者の報告は、仕事からの切り離しが困難であることを示唆しており、注視すべきとしています。

ジェンダー

報告書によると、雇用、収入減少や自己評価生産性におけるジェンダー間の差は、大部分、若者の男女の職業の違いやその他の社会経済的要素によってもたらされています*5。この調査は高等教育を受けた若い男女の状況を反映していますが、若い男性は失業や労働時間の減少、収入減少により影響を受ける一方、若い女性は自己評価生産性がより低い傾向にあります。雇用形態(公/民間)と主要な職業グループ(ISCP-08)に沿って、同年齢の若い男女を比較すると、ジェンダー間の差は、収入減少では3分の1(37%)、労働時間の減少では2分の1(53%)、失業についてはほぼ見られないほど(98%)に減少しました。一方、自己評価生産性に関してのみ、ジェンダー間の差は有意に確認されました(9%)。この結果には、家事やケアの増加などの仕事以外の要素が影響している可能性があります。また、労働力調査の結果は若い女性の労働市場の見通しはこのコロナ危機により深刻な影響を受けたことを示しており*6、過去の経済危機の調査からは、景気の低迷が及ぼす影響が男女で異なることもわかっています*7。そのため、新型コロナウイルスジェンダーにおける影響を理解するためには、更に詳しく調べる必要があるでしょう。

座談会の中では、男性の参加者が1名しかいなかったこともあり、パンデミックの影響のジェンダー間の差については話題に上がることはありませんでした。しかし、コロナ禍以前から抱えている女性側の悩みは解消されることなく、引き続き不安要素となっているようです。このテーマについては第4章で詳しく見ていきます。

働き方

パンデミック下、約4分の3(72%)の若年労働者が部分的、または、完全に在宅勤務をしていると報告されています*8。管理職(82%)、専門職(77%)、技術職(78%)の若者は、事務職や営業、その他の職種(54%)よりも在宅勤務をしている割合が高く、民間部門で働く若者(68%)の方が、公共部門の若者(77%)よりも在宅勤務をしている割合が低いことがわかりました。若い女性(75%)の方が若い男性(68%)よりも在宅勤務をしていることが報告されています*9

座談会参加者も、コロナ禍で在宅勤務を一部、または、完全に取り入れていると回答していました。弁護士のOさんは、2月からリモート、緊急事態宣言解除(2020年5月25日)後は週2でオフィスに出勤する日々を過ごしています。コアタイム出勤(10時出勤16-17時前に帰宅)と在宅を組み合わせて仕事を続けているそうですが、仕事は家でもできるという気づきが大きかったと在宅勤務に肯定的な意見を持っていました。一方、金融機関勤務、新卒3か月目のSさんは、現在新人研修を全てオンラインで実施しており、今後、出社する上で生じる変化への不安があるとのことでした。 

更に、現役インターンは3月から完全在宅勤務へと切り替わったこともあり、リモートに対する様々な意見が交わされました。Jさんは最初から最後までリモートでインターン期間を過ごしました。当初は顔も知らない職員と仕事をするにあたって、非常に気を遣ったことや、通常のインターンであれば得られるはずであった新しい人々との繋がりが全く享受できていないことに残念な気持ちを表していました。NさんとFさんは最初の1か月間はオフィスに通い、その後完全在宅に移行したことから、仕事の仕方の変化に戸惑ったといいます。一方、Fさんは、リモートワークの良かった点として、上司との密なオンラインコミュニケーションを挙げ、会えなくなるからこそ、ちゃんと機会を設けることがより重要だと述べました。

教育と訓練

報告書では、教育と訓練を修了することが難しいと若者が予測していることから、キャリアの見通しは不確かさ(40%)と恐怖(14%)に満ちていることが明らかになりました*10。これは、学校や学ぶ場の閉鎖が若者の社会的な接触を奪っていることと関連すると見られています。

現役インターンのNさんも2020年秋からの留学を予定していましたが、渡航が難しくなり、年内の授業は全てオンラインに切り替わりました。教育の機会は確保されたものの、留学先での就職までを視野に入れていたため、今後のキャリアに対する不安が生じていると述べていました。

しかし、新型コロナ危機や学校閉鎖の状況下に置かれていても、約半数の若者は新しい学びの機会を獲得しています*11。調査対象の44%、その中でも、高等教育を修了した若者の53%がパンデミックの始まりから新しい勉強を始めています。多くの若者は特定の職業に関する、または、技術的なスキルを向上させるコースを受講している(54%)一方で、その他様々な学びの機会(外国語、ICT、コミュニケーションスキル、問題解決、チームワーク)にも関心を示していることが報告されています。

座談会参加者のOさんは留学によるスキルアップを考えていましたが、パンデミックにより、その予定を変更せざるを得ない状況に置かれています。しかし、Oさんは留学は手段の1つであったとして、別の方法を探す事に意欲を見せていました。

 

以上、ILOの報告書で示されている数量的データとして若者の声と、ILO駐日事務所のインターン経験者8名のリアルな声を重ね合わせることで、パンデミックによって影響を受けている若者が直面している具体的な状況に目を向け、整理しました。雇用問題や収入減少、労働時間の増加、ジェンダーに起因する今後のキャリアへの不安、在宅勤務への移行、そして、予定していた教育機会に関する変更など、座談会参加者がこのコロナ禍で経験している問題や変化は、ILOの報告書で示されていた事柄と重なる部分が多くありました。このような点から、ILOの報告書で示された新型コロナウイルスの若者への影響は、ILOインターン経験者もある程度共有していると言えます。ただ、その状況の背景には様々な個人的な事情があることや、状況自体の捉え方も多様であることも同時に分かりました。

 

================================

ここまで読んでいただきありがとうございます!

Vol.3では、第4章で座談会参加者のエピソードに示唆されている、コロナ以前から若者のキャリアに影響を及ぼしている要素を取り上げ、これらの影響を乗り越えるためのアイデアを提示していきます。ぜひご覧下さい!

*1:ILO(2020) "Youth&COVID-19: Impacts on Jobs, Education, Rights and Mental Well-being”, https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---ed_emp/documents/publication/wcms_753026.pdf, p.13

*2:同上、p.18

*3:同上、p.19

*4:2019年3月に東京都産業労働局によって公表された「多様な働き方に関する実態調査(テレワーク)」によると、在宅テレワーク経験者が感じているデメリットの上位に「長時間労働になりやすい」が挙げられています。https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/hatarakikata/telework/30_telework_tyousa.pdf

*5: p.19

*6:ILO (2020) “Preventing exclusion from the labour market: Tackling the COVID-19 youth employment crisis” https://www.ilo.org/emppolicy/pubs/WCMS_746031/lang--en/index.htm

*7:Rubery, J. and Rafferty, A. (2013) “Women and recession revisited. Work, employment and society”, 27(3), pp.414-432.

*8:p.20

*9:この男女差の30%は、サンプル中の男性が女性よりも民間部門(在宅勤務の環境整備が公共部門よりも整っていない)で働いている傾向にある事に起因しています。

*10:p.26

*11:p.26