ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

MENU

【働く女性のエンパワーメント】ジェンダー平等に向けた企業の取り組み事例集

f:id:ILO_Japan_Friends:20210811212310p:plain

 

ジェンダー平等のための企業ポリシーの重要性

東京証券取引所は、2021年6月、上場企業への「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」を改訂、施行しました*1
ポイントの一つは、中核人材のダイバーシティー(多様性)の確保です。管理職における多様性の確保(女性等の登用)についての考え方と自主目標の設定に加えて、人材育成方針・社内環境整備方針を実施状況とあわせて公表することが要求されました。
ダイバーシティーの推進は世界的な潮流ですが、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中120位*2 と大変遅れています。ジェンダー平等の推進は極めて重要な課題になっており、企業にはより一層の取組みが求められています。 

ILOによる企業好事例集の発刊

企業は、今後、女性活躍推進に向けてどのような取組みをすればよいのでしょうか。ILO(国際労働機関)などによるG7諸国における責任ある企業行動を通じた働く女性の経済的エンパワーメントの促進」(2017年9月1日~2020年12月31日)プロジェクトが参考になります。

 

www.youtube.com


このプロジェクトは、女性はイノベーション(革新的取り組み)、成長、雇用のカギを握る推進要素であり、女性がより有意義に経済に参加できる環境形成において民間セクターが決定的に重要な役割を演じているとの理解のもと、女性が仕事の世界で直面しているジェンダー不平等の解消に関して、民間セクターの関与の促進を目標の一つとしています*3


プロジェクトでは、指導的地位における女性の促進、ワーク・ライフ・バランスや育児・介護といったケア政策/ポリシーなどに焦点を当て、企業や組合等の好事例集を公開しています。


今回は、企業の好事例集である「Company policies and practices for gender equality(男女平等のための企業ポリシー及び実際の活動)*4」(英語、仏語版のみ)で取り上げられた、日本企業のジェンダー平等を実現する取り組みをご紹介いたします*5 

富士通の取り組み

レポートによれば、富士通株式会社本店では、2017年から、労働者のケア責任を支援するため、3万5000人の労働者全員がテレワークを利用できるようになったと記載されています。また、妊婦や子育て中の労働者に対し、ベビーシッター費用の補助、事業所内保育園などで支援するほか、女性社員の長期的なキャリア継続の支援を目的として「女性リーダー育成プログラム」を実施しているとのことです*6。さらに、父親も14週間の有給の育児休暇を取得することができると紹介されています。
また、ロンドンオフィスなどでは、ジェンダー間の賃金平等のための包括的な取組みが行われており、賃金格差の測定や報告、より良いワーク・ライフ・バランスの追求、女性管理職の人数の増加などに取り組んでいるとのことです。 

住友化学の取り組み

住友化学株式会社では、98日間の有給の産休のほか、父親も5日間の育児休暇を取得することができ、父母はそれぞれ28日間の育児休暇を一回または分割して取得することができます。
さらに、社内や職場付近に保育所を設置して、乳幼児180名を保育できるようにしたことで、親は子どもと時間を過ごせるうえ、子どもが付近の安全な場所にいることが分かります。また、住友化学では、特に父親が保育園を利用することを促して、ケア責任をより担うよう動機づけを行っています。
これらの取り組みにより、女性労働者の割合は、11.8%(2009年)から13.6%(2016年)に上昇したほか、2004年から2016年までに産休を取得した女性労働者の90%が職場復帰を果たすなど大きな効果が上がりました。また、2019年度に育児休業を終了した女性社員の復帰率は、100%になっています*7

三菱UFJ銀行の取り組み

三菱UFJ銀行株式会社は、ワーク・ライフ・バランスを促進するため、有給育児休暇、父親の子育てへの参加の促進、子育てプログラムへの助成など、様々な取り組みを行っています。
三菱UFJ銀行では、女性活躍推進法の施行を受けて、女性の就業率を改善し、男女労働者双方のワーク・ライフ・バランスを支援するための児ポータルを2016年に開始しました。このオンラインポータルを通じて、産休中でも女性が職場と連絡を取ることができるようになるほか、上司や使用者とのやり取りを行ったり、自宅で能力の開発維持を行うことで円滑な職場復帰ができるようになります。
三菱UFJ銀行のワーク・ライフ・バランス施策はポジティブな影響を発揮しているようで、女性労働者の割合が向上したほか、育産休取得後に職場復帰する割合も向上しました。この方法で雇用を維持したことで、45万米ドルの支出が抑えられたと推定されています。
また、女性がマネジメント層により就くことになり、中間、上級管理職の割合は2006年に5%だったのが、2016年には19%に上昇しました。2021年3月時点での女性管理職比率は、44.6%にまで達しています*8

あなたの会社でもジェンダー平等を推進しませんか

このように、先んじてジェンダー平等の推進に取り組んでいた企業では、優秀な労働者を採用、雇用維持が可能になるなどポジティブな影響が生まれています。好事例集で紹介されている日本企業は一例であり、他にも素晴らしい取組みを行っている企業は少なくありません。
また、ダイバーシティーの推進は、それ自体が企業価値であると近年考えられており、「持続可能性」(サスティナビリティ)のある投資先として信頼されることが重要となっています。
好事例集を参照していただき、あなたの会社でもダイバーシティー経営を始めてみませんか?

 

次回労働組合の取り組みについてご紹介します。

*1:日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」https://www.jpx.co.jp/news/1020/20210611-01.html (2021年7月6日)

*2:世界経済フォーラム(World Economic Forum)「The Global Gender Gap Report 2021」http://www3.weforum.org/docs/WEF_GGGR_2021.pdf (2021年7月6日)

*3:ILO駐日事務所「G7諸国における責任ある企業行動を通じた働く女性の経済的エンパワーメントの促進」https://www.ilo.org/tokyo/ilo-japan/partnerships-with-japan/WCMS_773304/lang--ja/index.htm (2021年7月6日)

*4:ILO, ” Company policies and practices for gender equality” ,https://www.ilo.org/empent/Publications/WCMS_756721/lang--ja/index.htm (accessed July 06, 2021)

*5:ILO, ” Company policies and practices for gender equality” https://www.ilo.org/wcmsp5/groups/public/---ed_emp/---emp_ent/---multi/documents/publication/wcms_756721.pdf(accessed July 06, 2021)

*6:富士通株式会社「女性の活躍支援」https://fujitsu.recruiting.jp.fujitsu.com/whats/diversity/diversity-woman/(2021年7月6日) 

*7:住友化学株式会社「サスティナビリティデータブック2020」https://www.sumitomo-chem.co.jp/sustainability/information/library/files/docs/sustainability_data_book_2020.pdf (2021年7月6日)

*8:三菱UFJ銀行「福利厚生・女性活躍」https://www.bk.mufg.jp/muct/welfare.html (2021年7月6日)