ILO_Japan_Friends’s diary

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国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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【報告書紹介】ジェンダー平等に向けて大跳躍(2/2)

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前回の記事では、仕事の世界におけるジェンダー平等を妨げる要因として、報告書ではケアの負担と雇用上の格差が取り上げられていたことをご紹介しました。

記事はこちらから↓

【*新コーナー*報告書紹介】ジェンダー平等に向けて大跳躍(1/2)
今回は、グローバルの状況を分析した報告書を踏まえて、日本での状況を見ていきたいと思います。

 

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日本におけるジェンダー平等

世界経済フォーラム(WEF)の「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)」2020年版によると、ジェンダー平等の世界ランキングにおいて、日本は153カ国中121位となり、これまでで一番低い結果となりました。

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もう少し具体的にランキングに用いられた仕事の世界に関係する指標を見ていくと、「ジェンダー間の経済的参加度および機会」という指標では、女性の労働参加率が79位、そして「類似の労働に対する賃金平等」という指標では、67位という結果となりました。

 

ーケア労働分担は実践されていない?

日本では、ケア労働は誰によって行われているのでしょうか?

労働政策研究・研修機構の「第5回(2018)子育て世帯全国調査」によると、調査対象の1974世帯のうち、従来型標準カップル(男性がフルタイム、女性が非正規雇用もしくは無職)は約7割を占めています。また、フルタイムで働く夫の就業時間が 60 時間を超えた場合、妻のフルタイム就業率が顕著に低下することも明らかにしています。さらに、ふたり親世帯の平均家事時間数は、母親が207分/日であるのに対し、父親は35分であることも明らかにしています。この調査は、日本の多くの世帯において、母親・妻である女性が家庭内におけるケア労働を担っている点を示しています。

また、今年アデコが1000人の男性会社員に実施した「子育て世代男性会社員の家事・育児分担に関する意識調査」によると、意識レベルでは、妻がもっと仕事に比重を置くことへの理解等が見られる一方で、家事時間の分担では妻が7割、夫が3割が最多であり、4割以上が子ども出生後も仕事上で大きな変化はないとし、実際の行動がより求められる結果となっています。さらに、7割以上の会社で育休制度が整備されているにもかかわらず、実際の利用率は全体の2割未満となっているとのことです。

2019年の内閣府実施「男女共同参画社会に関する世論調査」でも、「男は仕事、女は家庭」に反対する男性が初めて5割を超えたことが話題となりました。既に多くの人たちが、女性ばかりにケア労働を負担を強いることは不平等であると認識している一方で、今後の日本社会の課題としては、この認識をいかに実践にうつしていくか、という点にあるように思えます。

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ー日本の同一労働同一賃金は格差を解消する?

日本では、正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者) と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差を解消する同一労働同一賃金が導入されたばかりです。2020年4月からは大企業、そして2021年4月からは中小企業に適用されます。

同一労働同一賃金は、同一の仕事に従事している人たちに対して、同一の賃金を支払う、という施策ですが、どのように男女間の賃金格差の改善につながっているのでしょうか?

2019年の総務省統計局の労働力調査によると、男性の正規職員・従業員数は2334万人、非正規職員・従業員数は691万人であるのに対し、女性の正規職員・従業員数は1160万人、非正規職員・従業員数は1475万人となっています。

このように、日本では男性に比べて女性の非正規職員・従業員数が非常に多くなっています。これはグローバルの状況にも反映されており、ILOの報告書「世界の非標準的雇用:課題の理解と展望の形成」では、日本の非正規労働者も含めた世界の非標準的労働者の中で、移民、若者に加えて、女性が多いと指摘しています。

つまり、同一労働同一賃金の導入は、ジェンダーの賃金格差を解消する第一歩となり得るのです。

実際、20-50代の就業女性1200名を対象にした日本FP協会の「働く女性のくらしとお金に関する調査2020」によると、働き方において重要だと思う取り組みについて、「有給休暇の取得促進」「賃上げ促進」に次いで、31.3%の人が「同一労働同一賃金(雇用形態に依らず仕事に応じた収入を支払う)」と回答しました。

しかし、同一労働同一賃金では、男女間の賃金格差を解消するには十分ではありません。前回のブログで言及したILO第100号条約にも規定されている同一価値労働同一賃金が、ジェンダーの賃金格差の解消に求められるのです。

では、この二つはどう違うのでしょうか。

ILOの「同一価値労働・同一報酬のためのガイドブック」によると、同一価値労働同一賃金の考え方では、男女が同じ又は類似の仕事をする場合に、同一賃金が支払わなければならないのみならず、全く異なる仕事をしていても、客観的な基準に照らして同一価値の仕事である場合には、同一賃金が支払わなければならないのです。

日本では正規職員・従業員における男女間の賃金格差も指摘されています。正規・非正規間の賃金格差を解消する同一労働同一賃金は極めて重要な施策である一方で、男女間の賃金格差の解消には、同一価値労働同一賃金への取り組みが求められるのです。

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ありがとうございました!