ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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コロナ禍に聞く若者の働き方ー世界の労働問題を扱うILOインターン経験者の視点ーVol.2

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新型コロナウイルスの影響が及ぶ社会の中で、実際の若者はキャリアについて何を思い、何を感じているのか?

本企画では、この問いを中心に、ILOに関わる若者の中で、それぞれのキャリアの歩み、今後のキャリアの目標、そしてコロナの感染拡大が続いている今の状況について話しました。

Vol.1はこちらから

Vol.2では、昨年ILOインターンをした卒業生3名を招いた座談会でのリアルな声の一部をご紹介します。

 

<聞き手>

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainf:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain現役インターン

<話し手>

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain国際協力実務家。大学卒業後、民間会社で勤務。その後、協力隊員としてマダガスカルで2年過ごし、イギリスの大学院にて国際開発学の修士号を取得。帰国後、ILOインターンを経て、現在は有期雇用職員としてコートジボワールで勤務。第一次産業と民間企業の連携に関するプロジェクトを担当し、プロジェクトの軌道修正やモニタリングなどに従事。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain大学を卒業後、一旦就職し、その後イギリスの大学院にて修士号を取得。帰国後は、自分の専門分野である移民労働者支援などの事業を行っている会社や団体をメインに求職活動中。その傍ら、国際開発業務関連のアルバイトにも従事。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain大学院在学中。モロッコをフィールドに、格差、貧困、不平等、それらの再生産について、特に教育の場に重心を置きながら研究。

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座談会の様子

 今のキャリアに至るまで

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今までのキャリアの歩みを教えてください。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain学生時代、もともとそんなに裕福ではないこともあり、途上国の格差や不平等に取り組みたいと考えていました。当時は、卒業後すぐの大学院進学も考えたのですが、ゼミの先生から、「一度きちんと働いて、それでも熱が覚めなかったら、その方向に戻れ」とのアドバイスをいただき、発電機を扱う民間会社で働きました。

でも、仕事中に涙が止まらなくなったり、吐きそうになったりして、体力的に限界がきました。その時に、大学生時代の貧困問題に携わりたいと考えていたことを思い出し、現場での経験を通してその理由を確かめるために協力隊に応募しました。

協力隊では、農業関連の仕事に従事していました。この経験から、開発の現場では現地の人々に仕事を提供する民間企業の活性化が大事だと学び、その後大学院を経て、国際開発の現場で官民連携をサポートする仕事に就きました。いろいろ紆余曲折していますが、根本のところはずっと変わらずやってきています。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain大学を卒業後、一度は働きましたが、その後イギリスの大学院で移民について勉強しました。日本にいる外国人の方々を支援したいと思い、帰国後は移民労働者支援に従事できるよう求職を続けています。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain私は大学に入学してから現在に至るまで、インターンなどを経験させて頂きつつも学生を続けています。大学時代は社会階層論や教育・労働社会学に重心を置くゼミで勉強しました。その後モロッコへ留学し、義務教育段階の途中で学校を去った人々を対象とするノンフォーマル教育施設での調査をもとに修士論文を執筆、現在に至っています。

 

日本の「仕事の世界」の見え方

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain私は来年から働く予定ですが、就活の時「遅かったね」と言われました(笑)新卒一括採用が主流の日本では、新卒は22歳前後の方ばかりなので仕方ないですが。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain労働市場で弱い立場に置かれやすい若年層の雇用を確保するという意味で意義のある制度ですが、新卒採用の流れやタイミングから外れると就職の足がかりが掴みづらくなってしまう傾向もあるように思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain確かに、日本の新卒一括採用は、会社が求める人材を育成することができる制度ですよね。外資系企業などは、この制度を積極的に使っていないようですが、新卒一括採用の制度ではない採用も、なかなか難しい面があるのかなと。例えば、アメリカの学生は、インターンやアルバイトを経験しないと、行きたい会社に入れない可能性があるそうです。インターンは、無給あるいは低賃金が多く、学生の殆どは自腹を切ったり、親に支援してもらったりして、生活をしなければなりません。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plainそうすると、結局裕福な家庭の人のみが出世できるという仕組みになっていると感じます。しかも、最近では学位を持っていることが求められる場合が多くなっています。借金に頼らないで学位を取れている人たちが、結局出世できる仕組みになっているのでは?アルバイトやインターンの名目で職業トレーニングを受けている若者が多くなるので、結果として若者の失業率は減るかもしれませんが、格差が広がってしまうと感じます。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain日本の転職事情はどうでしょうか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain私は転職活動を行っている最中ですが、うまくいっていません。書類の段階で落とされることがほとんどです。仕事の経験はありますが、今後働きたい分野との関連性も相まって、大学院が「ブランク」として捉えられている側面も影響しているのかと思います。 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plainブ、ブランク・・・。就職活動に関して、私自身は未だ経験がありませんが、就職活動を行っていたILOの同期インターンの方からは、これからつきたい仕事とこれまでの勉強や研究、職務経験を一貫性のあるものにし、ストーリーとして組み立てることが大事だと聞きました。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plainキャリアストーリーを作り上げる上で、先見の目を持っておくことはポイントの一つだと思います。例えば、自分がしてきた経験の点と点を繋げる線として、資格を持っておいて、その線を証明できるようにする、とか。私が働いている領域では、工学系の修士号や、コンサルタント経験など、先を見据えて必要なスキルを蓄えてからくる人達がたくさんいます。その場の気持ちを大事にすることもいいですが、自分が目指すところには何が必要なのかを事前に調べることも大事だと思います。

また、新卒採用ではストーリーは大事ですが、転職では即戦力がより求められているので、能力と経験が求められます。もちろん、ストーリーは自分にとって大事ですが、転職だと、例えば募集要項に合わせた経歴の見せ方や用語の使い方が大事だと思います。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plainなるほど。先輩に経歴の書き方も含めて就活のコツを聞いたり、OBOG訪問などで希望する職場について聞いたりといった人づてに情報を集める機会の重要性を改めて感じます。人づてに情報を集める機会については、COVID-19の感染が問題となった今年は特に困難な状況があったのではないでしょうか。情報収集において重要な人とのつながりや履歴書に記載できる留学などの経験の寡多、スーツや靴などの道具立てなどは、各自の置かれた環境によって異なる様々な資本の量にも影響を受けるのではないかと思います。

 

キャリアにおける障壁

 

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain今後のキャリアの目標はありますか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain研究はまだまだ様々な課題を抱えていますが、今後も続けたいと思っています。その上で、専門を生かしながら教育や社会開発などの分野で実務に携わることが出来るようになることが目標です。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain今の仕事のあとは、JPOへのチャレンジを考えています。JPOが難しそうだったら日本で開発コンサルタントの道に進むかもしれません。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plain今後キャリアを積み重ねていく上で、障壁となりそうなものはありますか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plainプライベートでは結婚を考えているのですが、パートナーは国外で生活したいと思っていないので、単身赴任になるのかなと。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain昨年結婚しましたが、求職活動をしていると、プライベートとキャリアの両立が現実的に考えられていないと感じます。やはり、出産前に育休などの制度が整備されている仕事につかないと、出産後改めて仕事に就くことは難しそうだなと感じます。

今はパートナーの収入で二人の生活ができていますが、このままだと自分がやりたいことを仕事にすることはできなさそうです。とりあえずお金のために働く、というところからスタートすることになってくる気がします。少なくとも3年間は絶対に安定して働けるところに就職しないと、子供は産めないと思いました。

 

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain以前アフリカの某国からきた留学生の友人に「日本は再チャレンジが難しい社会だと思う」と言われたことがあります。確かに私個人も、一度何らかの理由から制度の枠外に出ると、再びメインストリームに戻るのはなかなか難しいのかもしれないと感じ、就職をせず文系の大学院に進む選択に不安を感じたことがありました。若年層の雇用機会をある程度まで制度化して保障することと、制度から一度離れても再び接続できること、難しいかもしれませんがどちらもある社会の方が生きやすいのではないかと感じます。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain若者に限らない問題ですよね。別の分野で再チャレンジしたいと思う人に、もう一度教育に戻る機会も増やしていくべきだと思います。私も、一旦大学院に行きましたが、再就職の機会がなかなか見つけられていません。このまま行くと、労働市場のレールから外れた人間になってしまいそうです。

 

コロナ時代における仕事の未来

 

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f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainまだコロナの影響が続いていますが、皆さんはどのような影響を受けましたか?

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain仕事の契約では、2019年12月から2021年12月までコートジボワール駐在の予定だったのですが、コロナのため一時帰国中です。プロジェクトの現場にいけないことで様々な支障が出ていますね。また、給与にも影響が出ています。コートジボワール駐在中は現地手当が出るのですが、日本にいる間は当然ながら出ません。そのため、その分給料が相当下がってしまい、コロナ前の約三分の一になってしまいました。私は、奨学金という借金で教育を受けていたので、その借金を抱えている身としては、余波を受けていると感じますね。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain今年の2月から業務委託で2ヶ月働く予定でしたが、期間が1ヶ月に短縮されてしまいました。また、転職活動中にコロナに突入したため、色々難しさを感じています。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain夏に予定していた短期調査は出来なくなってしまいましたが、もともと個室での研究が生活の中心だったので、いまのところ生活上大きな影響は受けていません。ただし、自分が行おうとしていた研究をする上では現地調査が重要な位置を占めているため、向こう数年間の計画は大きく変更しなければいけないと考えています。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plainILOのモニタリングでも、教育と訓練の中断は影響が大きく、ロックダウン世代を生みかねないと指摘されていますね。

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ロックダウン世代と名付けられ括られてしまうことには危機感があります。「この世代は運が悪かった」というだけで十分な支援がないままどんどん上にコマ送りにするのではなく、将来的にそのような括りが不要になるよう具体的な支援が必要なのではないでしょうか。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain今仕事を失った人たちに一時的な支給だけではなく、コロナでキャリアの「レール」から外れた人たちの再就職など、長期的な政策が必要になってきますね。

 

仕事の意味と仕事における理想の状態

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plain色々お話いただき、ありがとうございます。最後に、座談会の締め括りとして、皆さまにとって仕事とはどういうものか、今後キャリアを積んでいく中で仕事における理想的な状態とはどういうものか、ぜひお聞かせください。

 

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174523p:plain私にとって仕事とは、社会に貢献するために自らの価値を提供すること。社会が求めるものに対して、同じ志をもつ人たちと、停滞することなく、常に変化を求め、より良い結果を追求していける状態が、理想的な状態ですね。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174530p:plain私にとって仕事とは、自分と社会の接点、社会に貢献できる場所、自己実現の場所です。この考え方で人生の他の部分を顧みない人になりたくはないですが、今現在は自己実現と仕事がほぼ同化しています。また、同じ目標に向かえる仲間と、わくわくしながら向上心を持って変化を恐れずに取組み、成果を出し続け、プライベートの家族や個人の時間も大切にできる状態が、理想的な状態です

f:id:ILO_Japan_Friends:20200901174536p:plain私にとって仕事とは、生活を営むために不可欠のもの。またより広く、個人や組織、社会にとって意味のある目標や目的を達成するためにする努力。専門性を培い、何らかの意味ある形でその知識や経験を社会に返せる状態が理想です。

f:id:ILO_Japan_Friends:20200828122644p:plainf:id:ILO_Japan_Friends:20200828122647p:plainありがとうございました!

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次回は、2名のアラムナイをご紹介します。ぜひご覧ください!