【報告書紹介 vol.2】現代奴隷制の世界推計:強制労働と強制結婚(2/2)

前回の記事では、報告書に沿って、現代奴隷制の定義や、世界の状況、強制労働に焦点を当ててご紹介しました。
今回は、ILO駐日事務所の取り組みと、現状に対処するためのツールをご紹介します。
- 「公正な人材募集・斡旋に関する一般原則及び実務指針ならびに募集・斡旋手数料及び関連費用の定義」の日本語版発表
- 社会保険労務士制度の世界的普及を目指し、全国社会保険労務士会連合会との覚書締結
- ILOバックグラウンドペーパー「ビジネスと人権行動計画(NAP)策定に向けた関連文書の分析~主要テーマごとの参照事項の集約」の作成
- 多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)第5版(2017年)-解説掲載
--ILO駐日事務所の取り組み①---
「公正な人材募集・斡旋に関する一般原則及び実務指針ならびに募集・斡旋手数料及び関連費用の定義」の日本語版発表
公正な人材募集と斡旋を促進するため、移民労働者を含め、すべての労働者を対象とし、人材派遣会社を通じた募集・斡旋にも適用される一般原則と実務指針がまとめられています。前回もご紹介したように、強制労働の被害者の多くは移民というデータがあり、代表的な搾取方法は、
・斡旋手数料の徴収
・給与や労働条件/職務の性質に関する虚偽の約束
・標準以下の労働条件での労働
・国内の基準や同僚を下回る賃金
などが挙げられます。このような事態を防ぐためにも、送り出し国と受入国募集・採用制度を改革する必要があり、そんな時、このツールが役に立ちます!
以下が、資料内に記載されている”公正な人材募集・斡旋に関する一般原則”13項目です。この原則を元に、政府や事業者及び公共職業安定所に求められる責任が具体的に記載されています。より詳しくこの資料について知りたい方はこちらをご覧ください。


出典:ILO「公正な人材募集・斡旋に関する一般原則及び実務指針ならびに募集・斡旋手数料及び関連費用の定義」、2019年
--ILO駐日事務所の取り組み②---
社会保険労務士制度の世界的普及を目指し、全国社会保険労務士会連合会との覚書締結
ILOと全国社会保険労務士会連合会は2020年3月23日に社会保険労務士制度の導入に向けた技術協力などを内容とする覚書を締結しました。連合会とILO本部(スイス・ジュネーブ)とをテレビ電話システムでつないだ締結式の様子はこちら 。
この覚書において予定されている活動には、
・他国(特に新興国及び開発途上国)における社会保険労務士制度の導入に向けた技術協力の実施
・労働・社会保障関連法令等の遵守向上を通じて企業の発展と労働者の福祉に寄与する社会保険労務士の役割に関する意見交換、調査研究等
が含まれています。インドネシアに続き、マレーシアやベトナムにおける社会保険労務士制度導入における協力活動の可能性も示されました。世界的に移民労働者が厳しい環境に置かれやすい傾向の中、ディーセント・ワークと持続可能な開発目標の実現に大きく寄与することが期待されます!
“全国社会保険労務士会連合会”についてもっと知りたい方はこちらをご覧ください。
--ILO駐日事務所の取り組み③---
ILOバックグラウンドペーパー「ビジネスと人権行動計画(NAP)策定に向けた関連文書の分析~主要テーマごとの参照事項の集約」の作成
グローバルサプライチェーンの拡大に伴って、注目されているテーマ「ビジネスと人権」。現在、日本でも政府が中心となり、「ビジネスと人権に関する行動計画(National Action Plan : NAP)」の策定に取り組んでいます。ILO駐日事務所は、NAP策定プロセスにおいて複数のステークホルダーから重要性が指摘された特定のテーマごとに、国際社会からの視点をまとめた日本語資料を出版。NAPを議論する際に参考となる国内的/国際的な6つの関連文書
を5つの分野(ディーセント・ワーク、情報開示、外国人労働者、人権デュー・ディリジェンス&サプライチェーン、公共調達)ごとにまとめ、各テーマで参照すべき事項を整理しています。
これと国内の議論を合わせて俯瞰することで、日本NAPのあるべき姿を追求する努力に貢献することがこの資料作成の大きな目的です。
出典:ILO駐日事務所「ビジネスと人権行動計画(NAP)策定に向けた関連文書の分析」、2020年
--ILO駐日事務所の取り組み④---
多国籍企業及び社会政策に関する原則の三者宣言(多国籍企業宣言)第5版(2017年)-解説掲載
グローバルサプライチェーンつながりで、もう一つ、ILO多国籍企業宣言をご紹介します。この宣言は、社会政策と包摂的で責任ある持続可能なビジネス慣行に関して、企業(多国籍企業及び国内企業)に直接の指針を示したILOの唯一の文書です。多国籍及び国内企業、本国と受入国の政府、労使団体に対して、一般方針、雇用、訓練、労働条件・生活条件、労使関係の5つの分野に関する指針を示しています。

本日ご紹介した資料は、日本を含む世界中の国々において、国境を超えて働く人々の労働問題に対処できるツールになりますので、ご興味がある方は、ぜひ資料そのもののを読んでみてください。
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以上、報告書「現代奴隷制の世界推計 強制労働と強制結婚」(2017)の要点と、ILO駐日事務所の取り組み&役立つツールについて2回にわたりご紹介しました。また、現代奴隷制に対し、ILOが提示している全般的な解決策にご関心のある方は、是非、報告書をご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました!次回の報告書紹介も是非、お楽しみに!