ILO_Japan_Friends’s diary

ILO Japan Friends’ diary

国際労働機関(ILO)駐日事務所・インターンによるブログです。

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ILO COOP 100 インタビュー企画「耕す、コープを。」:第1回 (株)地球クラブ 厚東清子さん(1/2)

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 本企画の背景

2020年3月23日、ILO協同組合ユニットは創立100周年を迎えました。国や企業のサービスの届かない地域にも、必要なインフラやサービスを提供してきた歴史が協同組合にはあり、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)と持続可能な開発目標(SDGs)の実現に貢献してきました。世界中が新型コロナウィルス感染拡大の危機に直面し、人々の連帯がこれまで以上に必要とされる今、協同組合に注目が集まっています。

この機会に、若者世代の協同組合のイメージ(「古い」「縁遠い」)をより身近なもの/魅力的なものとするべく、日本の協同組合の活動を振り返ります。これからの時代の仕事/生活/消費/生産において、また今回のパンデミックをはじめ危機的状況において、協同組合はどのような役割を果たし、より良い未来を創っていけるのか。各協同組合で活躍される方々へのインタビューを通じて、協同組合の強みや可能性を、若者代表のILO駐日事務所インターンと一緒に耕して(探って)みたいと思います。

第1回は、株式会社 地球クラブ 厚東清子さんへのインタビューです。
こちらのインタビュー(短縮版)はILO駐日事務所のウェブページにも掲載されています。

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インタビュー実施日:2020年5月15日

聞き手      :ILOインターン 藤田真理

グラフィック   :中尾有里

記録       :ILOインターン乗上美沙

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 生協が再エネ!?株式会社 地球クラブとは?

株式会社 地球クラブは、生協の電力事業を担うために設立された、日本生協連の子会社。再生可能エネルギーを“つくって つかって ひろげて”を目指し、2014年に設立されました。再生可能エネルギー(FIT電気含む)の調達・供給を中心とした電力事業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。 

現在の仕事は、”生協における再生可能エネルギー普及”

  • 現在のお仕事内容を教えてください。

厚東さん(以下、略):日本生協連の子会社である地球クラブで仕事をしています。生協の事業所や組合員に電気を供給する仕事です。供給だけでなく、電気の調達も担当しています。普段の仕事では二つの点について心がけています。第一に、環境への配慮です。環境を考慮し、再生可能エネルギーから作られる電気を調達しています。第二に、家計への配慮です。どれだけ良い電気であっても、値段が高いと誰も使わないので、大手電力会社より少しでも安い価格で供給するようにしています。

 

今までは、発電時に二酸化炭素を出すというのが一般的だったんです。一方、再生可能エネルギーは、電気を作るための原料が色々ある中で、発電時に二酸化炭素を排出しない地球上に存在するもの使って作るエネルギーを指します。「原発二酸化炭素を排出しないからいいんじゃないか」という意見もあるのですが、東日本大震災原発事故を機に、二酸化炭素を排出しない、かつ、原発にも頼らないということにこだわっています。再生可能エネルギーは、風も水も地球上に存在していて、なくならない、だから、ずっと再生するというエネルギーなんです。地球上に存在するので、エネルギー自体はお金がかかりません。風力発電も風に「お金出すから吹いて~」というのではなく、風が勝手に吹きますし、太陽光発電も自然に日が照りますよね。

 

再生可能エネルギーを使用して発電しているものを中心に調達をしています。更に、調達だけではなく、再生可能エネルギーに由来する電気の利用も促進しています。例えば、電気は電線を通りますが、電線は通せる電気量に限りがあります。現在は、原子力で発電されたもの、火力で発電されたもの、石炭で発電されたものも含まれていて、その割合が高いと、再生可能エネルギー由来の電気が通れる量は少なくなってしまいます。今後、多くの人が再生可能エネルギーに由来する電気を選ぶようになると、電線の中でその割合が増えていきます。そのために、「再生可能エネルギーの電気を使うように変えませんか?」というアピールも取り組みの一つなんですね。

今は、主にまだ再生可能エネルギー導入の取り組みができていない生協の事業所に対して営業をしています。各生協の方針によって違うので、環境のことは大事だけど、やはり電気代を安くしたいと言って大手の電力会社を選ぶというケースもあり、そこにどうアプローチしていくかを地球クラブだけでなく、日本生協連としても模索しています。再生可能エネルギーによって好循環となる環境にまつわるストーリーに加え、再生可能エネルギーだとCO2排出量も少ないので、各生協の環境配慮の指針や目標の達成にも適しているという、現実的な数字の話もします。

また、地球クラブは、直接組合員と関わることはありませんが、コープみらいさんやコープ東北さんを通じて、組合員さんの声を集めてもらったりしています。例えば、組合員さんに対するアンケートをお願いして、その回答の中でいろいろな声をいただいています。発電所スタディーツアーがあったら参加したいという声も沢山いただいているので、これから形にしたいなと思っているところです。

 

  • 仕事でのやりがいはどのような時に感じますか?

今の仕事への入り口は単純に人事異動でしたが、生協全体で、「原発に頼らないエネルギーを皆でつくって使っていきましょう」という方針がつくられ、それを形にしているんですよね。先を見据えてみんなで決めたことを実現できている部署であることに、やりがいを感じています。

地球クラブは小売電気事業者なのですが、その日、その時に必要な電気の量に対して、同じバランスで調達をすることが最重要課題となっています。このバランスがうまくいかないと、北海道地震で起きたブラックアウトや停電が発生してしまいます。このバランスを正確に予測して、それに応じた電気の量を買う、という作業を、毎日30分毎に見ていくのですが、その誤差が少なかった時はすごくやりがいを感じ、日本のエネルギーの安定供給の一助になっていると感じます。

また、電気は作られる元が全然違うんですよね。海外から調達したエネルギーを元に発電した電力だと、その電力への収益は海外に回っていくのですが、国内にあるエネルギーを使って国内で発電された電力は国内にお金が回ることになります。一方、海外から輸入した天然ガスや石油で発電した電力は燃料購入先である海外にお金が流れていきます。電気は誰もが日々使いますが、電気に対する支払い(電気代)が、どこへ循環していくのか、自分のお金がどう使われていくのか、を知れることが面白いと感じています。地球クラブは、国内で電力を調達しているので、収益は日本の中で循環していき、結果的に地産地消にもつながるようになっています。

 

  • 今まで生協の中でも沢山の仕事を経験されてきたと思いますが、今の仕事と、前職との違いは何でしょうか?

前職は商品事業の業務に従事し、コープ商品の開発等を担当していました。商品の在庫管理が大変で、今はコロナの影響で注文が多くなっていますが、当時はここまで注文が多くなく、在庫が残り、賞味期限が切れるものとかの在庫管理が大変でした。食品ロスの議論が行われていますが、結局賞味期限が近いものは生協が受け入れてくれないので、在庫管理の難しさを体感しました。一方で、電気は物理的商品がないので、欠品とかを考えることはありません。

悩んだ新人時代、支えになった組合員の存在

  • 前職も含めて、協同組合では様々なお仕事をされていたわけですが、なぜ、協同組合で働こうと思ったのですか?

協同組合だから働きたいと思っていたわけではなく、大学時代、私も協同組合は生協くらいの認識でした。ただ当時、株式会社には興味がありませんでした。株主のために利益をあげること、つまり、株主のために仕事をするのは楽しいのかなという疑問から、協同組合に関心を持つようになりました。また、全員が平等である組織であることにも興味を持ちました。

また、当時は神戸にいたのですが、神戸では生協の店舗数が多く、協同組合=生協というぐらい普段の生活の中で近い存在であったことも、コープこうべを志望した理由でした。

 

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  • 組合員のために働き、全員が平等であるという原則に惹かれて入社された中、入社前の理想と、入社後の現実の中で、何かギャップを感じたことはありますか?

最初は少し違ったと感じました(笑)「協同組合において事業系の活動をするためには、原資が必要だから、宅配等で利益をあげる必要がある」と株式会社のように言われたこともありました。赤字だったら何もできないから稼ぐのは当たり前だと。こういった現実に対しては、最初の4、5年は辛かったのですが、時間をかけて理解をしていきました。売上をあげて、利益を得た分を組合員に還元していくことが、協同組合にとっては大切だと理解しています。

 

  • 事業を展開する上で利益を上げなければいけないといった共通点はあるものの、働かれる中で、株式会社との違いを特に感じられた出来事はありますか?

入社後、最初は宅配業務だったので、組合員と接触できる機会を非常に多くいただき、「組合員の方々のために仕事をしていきたい」と自然に思えるようになっていました。生協のすごいところは、今は分りませんが当時は、「生協」って呼ばれていました。自分の名前を言わなくてもドアを開けて、初対面の方でも話をしてくださったり、身近な存在だったのかなと思います。組合員さんとの距離の近さは、宅配業務に携わっていない生協専従の職員も同じように感じていたのではないかと思います。この点は、やはり株式会社の場合だと、サービスの提供対象との距離は近くないことがあるのかなと思います。

 

  • 生活協同組合という大きな組織の中で、ご自身のやりたいことをどのように実現/実行されてきたのでしょうか?

生協がすごく大きな組織であるということはもちろん、知ってはいるんですが、働く上では、それほど意識していません。今自分がいるところから、つながりがあると思っているだけでしたね。やりたいことを実現、というのは、本当に目の前のことを大事に行動することかなと。今の仕事としては、何気なく使っている電気って選ぶこともできるし、未来に貢献することもできる、ということを常に意識しています。日本生協連の中でも、再エネについてあまり知らないという人は多くいるので、自分が考えていることを少しずつ広げていきたいなと。草の根運動みたいですけど(笑)以前は、(生協の)お店でも仕事をしましたが、その時も、「お店にはお店の役割がある」と思いながら、販売を通して利益をあげ、生協全体が回るようにするんだと考えて目の前の仕事をしていました。今やることを小さいけれど、しっかりやることの先に、大きなつながりがあったのではないかと思います。

 

  • 例えば、組織と考え方とご自身の考え方が違った際、どう立ち回ってきたのでしょうか?

配達していた頃は、組合員に愚痴をいったこともあります(笑)組合員はお客様ではありますが、純粋なお客さんとはまた違った特別な存在です。家族でも友達でもないのに、愚痴を聞いてもらえるってすごいなと、改めて思います(笑)

私は、基本的になんでも溜めないタイプなので、直接上司とかに話ができていました。目の前のことを一生懸命こなすことで、悩みを解消してきました。

労働組合に参加していた時もあったのですが、その時は他の生協との横のつながりで、事例やアドバイスを聞いたりしながら、新しい取り組みを行動に移していました。

 

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次回は、緊急時の生協間の連携や2030年のビジョンについて聞いていきます!お楽しみに!